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夏越の祓・夏越の酒
夏越の祓・夏越の酒

日本の神社では、半年に一度『大祓(おおはらえ)』という神事が執り行われる。大祓には、『夏越の祓』と『年越の祓』があって、いずれも本来は旧暦六月の晦日と大晦日に行われるものだったが、今は新暦に沿って行う神社も多い。

 

日本に新暦が採用されたのは1873年のこと。旧暦の明治5年12月3日が、新暦の明治6年1月1日になった。新暦では約1カ月、季節が早くなったわけだ。現在の6月30日といえば梅雨の真っ只中だけど、旧暦の6月は水無月。猛暑や水不足に耐え、疫病にかかることなく夏を乗り越えよう。そして後半半年の健康と厄除けを祈願したのだろう。

 

夏の暑さを神の怒りと考えて、神意を和らげるという意味の「和(なご)し」と「夏越し」をかけたのではないかともいわれている。

先日、近所の神社で夏越の祓が行われたので参詣してきた。神様に祓ってもらったのは、我が身の穢(けが)れである。日々の暮らしのなかで、ご先祖様を敬わなかったり、食べ物への感謝を忘れたり、モノを粗末に扱ってしまったり。そんな罪が穢れとなって身につくと、やがて病や災いとなって返ってくる。だから、祓ってもらうのだ。

 

大祓の起源は、古事記や日本書紀の神話にはじまり、その後、平安時代には宮中の年中行事として定められたという。現在、日本各地の神社で執り行われる夏越の祓では、神前に大きな輪っかが立てられ、これを参拝者がくぐることで罪や災いを取り除く『茅の輪くぐり』の神事が行われる。輪に使われているのは、茅(ちがや)というイネ科の植物。茅の輪のくぐり方には、次のような作法がある。

 

■茅の輪くぐりの方法

まず、茅の輪の正面に立つ

1)一礼し、左足からまたいでくぐり、左回りで正面に戻る

2)一礼し、右足からまたいでくぐり、右回りで正面に戻る

3)一礼し、左足からまたいでくぐり、左回りで正面に戻る

4)一礼し、左足からまたいで神前へ進む

 

「8」の字を書くように3回くぐってから、もう1回くぐって前へ進むわけだ。またくぐっている際には次のような略拝詞を唱えるとよいといわれている。

〜水無月の夏越の祓いする人は 千歳(ちとせ)の命 延ぶというなり〜

※略拝詞は地域や神社によって異なる。

 

夏越の祓でコロナウイルスもやっつけたいところだが、茅の輪くぐりが密を作ってはいけないと、神職だけで行ったり、作法通りではなく1回だけにしてというところもある。またこんな時代ならではの試みとして、車に乗ったまま輪をくぐる、ドライブスルー茅の輪なんてところもあるようだ。

 

参拝の後には、「夏越まんじゅう」や「水無月」なる和菓子を食べる風習がある。お酒ならキリリと冷やしさ冷酒といきたいところだが、この時期ならではの『夏越の酒』として、かつては「甘酒」が飲まれていたそうだ。

え?甘酒って、冬に体を温めるために飲むんじゃないの?と思うだろうが、俳諧や俳句の世界では「甘酒」は夏の季語。平安時代の宮中で、暑い時期に氷室の氷で冷やした甘酒が好まれたのがはじまりで、江戸時代には広く庶民にも普及し、甘酒売りが「あまい、あまーい」と声をかけながら町なかを売り歩いたという。

 

たしかに栄養たっぷりの甘酒なら、夏バテ対策や疲労回復にも効果的。現代では「飲む点滴」「飲む美容液」とまでいわれている。キンキンに冷やした甘酒で、夏越といきたい。

 

全国には、夏越の祓の際に甘酒を御神酒(おみき)としてふるまう神社もあると聞く。神の力が宿った聖なる酒だ。心のなかまで清められんこと間違いない。

お酒と文化

【おすすめ甘酒】

夏越の酒 菊正宗あま酒

大吟醸deあま酒
菊正宗酒造(灘)

大吟醸麹と大吟醸酒粕のいいとこ取りをした、贅沢な味わい。なめらかな舌触り、優しい甘さ、スッキリした後味が特長。

夏越の酒 八海山あまさけ

麹だけでつくった あまさけ
八海醸造(新潟)

酒造りで培った技術で麹をコントロールし、優しい甘さを引き出した。雑味のないスッキリとした味わい。砂糖不使用。

夏越の酒 獺祭甘酒

獺祭 甘酒
旭酒造(山口)

あの獺祭の甘酒。酒米の王様 山田錦の等外米を50%まで精米しており、甘さがスッキリと綺麗。麹仕立て・糖類無添加。

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