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CACHAÇA

海と太陽とカイピリーニャ
「カシャッサ」で陽気なカクテルを!

カシャッサでカイピリーニャ

東京・代々木公園で開催されているブラジルフェスティバルは、2019年で14回目を迎え、夏の恒例イベントとなった。20年〜22年はコロナの影響で中止となってしまったが、音楽やダンス、ブラジルフード&ドリンクなどで例年、熱気ムンムンの盛り上がり。そのなかでも、年々人気が高まってきてるなと感じたのが、飲食ブースのドリンク『カイピリーニャ』だ。

 

各ブースの店頭には『Caipirinha』の文字が大きく掲げられていて、「カイピリーニャいかがですか!」と呼び子の声もひっきりなし。ブラジルフェスへ来たら、誰もがカイピリーニャの名前を覚えてしまうに違いない。でも、それがどういう飲み物なのかは意外と知られていないように思う。

 

カイピリーニャは「カシャッサ」というブラジル産の蒸留酒にレモンと砂糖を加えて作られるシンプルなカクテルだ。ブラジルでは国民的なドリンクとしてバルやレストランはもちろん、アウトドアイベント、BBQ、ホームパーティでもよく飲まれている。コパカバーナのビーチに寝っ転ろんでいたら、必ずカイピリーニャ売りがやって来るとも聞いた。

コパカバーナでカイピリーニャ

で、その作り方。ブラジルのレモンはライムのように小さくて緑色しているのだが、手に入らなければライムで代用。

1)ライムの両端を切り落としてタテ半分に。白いワタを取り除いて6つにブツ切り。

2)底の平たいグラスにライムと砂糖を入れ、ペストルという棒でライムを潰す。

3)小さめのアイスをグラスいっぱいに入れ、カシャッサを注いでステアする。

 

ライムは丸々1個使ってもいいし、クシ切りでもいい。カシャッサを注いで混ぜてから氷を入れた方がやりやすいかもしれないな。グラスで作らずにシェイカーを使ってもOKで、各人がそれぞれのスタイルで作っているようだ。

 

では、そのベースとなる蒸留酒「カシャッサ」はどんな酒なのか。ラムの原料となるサトウキビがもともと西インド諸島には自生してなくて、15世紀にスペインが入植して持ち込んで製糖をはじめたことからラムが生まれたように、今度はポルトガルだ。

 

16世紀初頭、ポルトガルの探検隊が北大西洋のマデイラ諸島からブラジルへサトウキビの苗を持ち込んでプランテーションを設立。ラムの場合と同じようにアフリカの人々を奴隷として連れてきて製糖産業を拡張していった。このような歴史のなかで生まれたのがカシャッサである。原料は、ラムと同じサトウキビ。ただし、その製法はちょっと異なる。

 

ラムが砂糖を製造した後に残る糖蜜を原料にしたのに対して、カシャッサはサトウキビの搾り汁そのままが原料だ。法律にも定められ「カシャッサとはブラジルで生産されたサトウキビを原料とし、その搾り汁を発酵させた蒸留酒。アルコール度数は38~48度。製品1ℓに対して6gまで加糖したものも含める」と明記されている。

カシャッサの原料のサトウキビ

カシャッサが生まれた当初はプランテーションで働く奴隷のための酒だったようだが、次第にその他の労働者も飲むようになり、一般大衆へと広がっていく。17世紀末から18世紀にはゴールドラッシュが起こり、これがブラジルの人口を倍増させ、カシャッサのマーケット拡大を進めることにもなった。

 

しかし、カシャッサ人気の高まりは、宗主国・ポルトガルにとってはおもしろくなかった。ポルトガルがブラジルに輸出していた酒、ブドウの絞り滓から造る蒸留酒「バガセイラ」の販売に影響したからだ。そこでポルトガルは、カシャッサの流通を禁じたり、重税を課したりしたのだが、人々は、その反感からさらにカシャッサを愛するようになっていったという。

 

手元に、四角錐の陶器のボトルがある。ストローハットを被った髭面の男が、収穫したばかりのサトウキビの束を抱えている。かつて横浜の野毛にあったBAR『THE TIME』という店からもらってきたものだ。店内の壁には大きなブラジル国旗が掲げられていて、サッカーやサンバが好きな人たちが集まった。そこではじめて飲んだのがこの酒で、ブラジルの酒だとは聞いたのだが、カシャッサだと知ったのはずいぶんあとだった。

CANINHA PONTAL

表示は『CANINHA PONTAL』。「カニーニャ」が酒の種類で「ポンタル」が製品名だとは思っていたのだが……。カシャッサにはブラジル国内でもいろんな呼び方があるようで、一般には「カシャッサ」あるいは「カシャーサ」、サンパウロでは「ピンガ」、そのほか「カニーニャ」「アグアルディエンテ」「シュガーケーンブランデー」など100以上の呼び名があるという。カニーニャ=カシャッサだったのだ。

 

さて、現在、カシャッサには大規模な工場で大量生産されるカシャッサと、家族経営のような中小規模の蒸留所による手づくりカシャッサがある。ブラジルカシャッサ研究所によると全国に約4万もの生産者があって、その98%は後者だという。2種類の違いを「日本カシャッサ協会」の許可を得て、公式サイトから引用させていただこう。

 

■カシャッサ・インダストリアウ

サトウキビを機械で収穫、発酵には主に科学培養酵母が使われる。蒸留機は大量生産と味の安定性に適しているステンレス製連続式蒸留機が主流である。

■カシャッサ・アルテサナウ

サトウキビは主に手刈りで収穫、発酵には米粉やトウモロコシなどから抽出した酵母を使用することが多い。蒸留にはより個性を引き出すことのできる単式蒸留器(ポットスティル)を使用する。

 

さらに、カシャッサ・アルテサナウでは木樽による貯蔵熟成が行われ、その樽材にはアマゾンの原生林種などブラジルの特産木が使用されているという。その数は30種以上におよび、樽ごとの個性や特徴によってさまざまな味わいが生まれ、最近ではクラフトカシャッサとして少しずつ評判が高まっているのだとか。

 

ラムにも糖蜜ではなくサトウキビの搾り汁を原料にしたアグリコールラムと呼ばれる製品があるが、さすがにオリジナルの樽というのはないだろう。そうまでして、カシャッサはブラジルのラムなんかではないとしたいのは、ブラジルという国の誕生の歴史と人々のスピリッツに起因するのかも知れない。

ポルトガルからの初の独立運動の際に、ブラジルのチラデンテスなるリーダーが掲げていたスローガンはこうだった。

「独立の乾杯はポルトガルのワインではなく、我々のカシャッサで!」

カシャッサは独立のシンボルであり、ブラジルの誇り。そのことを国民が片時も忘れることなく、ビーチでもBARでも家庭でも、いつでも好きなだけ感じられるのが、カイピリーニャなのだ。

 

 

取材協力

BAR JULEP/https://www.julep.tokyo

オーナーは日本カシャッサ協会会長の佐藤裕紀氏

参考文献

日本カシャッサ協会公式サイト/http://cachaca-japan.jp

ブラジル特報(一般社団法人 日本ブラジル中央協会)

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51をポルトガル語読みして「シンクエンタ・イウン」。世界50カ国以上に輸出される最も有名なインダストリアウ銘柄。ピンガは51の製造会社名。

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​ベーリョバヘイロ

ブラジル国民に古くから愛されてきた老舗ブランド。ダブル蒸留方法で丁寧に造られ、マイルドな口当たりと香りのよさに定評が。1000mlボトル

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​ダ・キンタ

リオの山岳地帯で造られる伝統的なアルテサナウだが、数々の受賞歴を誇る。左:ブランカ/熟成させないタイプ。右:アンブラーナ/ブラジル産木「アンブラーナ」の樽で熟成。フランス製ボトル。

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​ソレダージ イペ

「イペ」はアマゾン流域に自生する広葉樹。花を国花とする法案もあったほど親しまれている。イペの樽で18カ月熟成させた、まろやかな味わい。

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