top of page

SPIRITS

蒸留酒は「スピリッツ」
そのはじまりと世界への伝播がおもしろい!

バックバーに並んだ酒ボトル

私たちが暮らす大気圧のもとでは、水の沸点は100度。でも、アルコールは78.3度で沸騰する。この温度差を利用して濃度を高めるのが蒸留という技術だ。アルコール発酵した醸造酒(発酵液)を熱すると、液体の中のアルコール分が優先的に気化することになるので、この蒸気を集めて、冷却して再び液体に戻す。と「蒸留酒(蒸留液)」ができる。

当然、蒸留した液体は、もとの醸造酒よりアルコール度数が高くなっていて、醸造酒のアルコール度数は、約5%〜18%といったところだけど、蒸留することで40%以上。何度も蒸留を繰り返すと最高96%にまで高めることが可能だ。もはや酒というより、純粋なアルコールに近い。

アルコール度数の高い蒸留酒は人体に働きかける力が強く、精神を高揚させ、活力を与える。かつて蒸留酒はおいしく飲むためというよりも、病気の予防や治療方法として広まったとも聞く。そんなところから「精神」や「魂」を意味するのと同じ「スピリッツ」と呼ばれるようになったのだろう。

この蒸留技術、じつは蒸留酒を造るために生まれたのではない。人類最古の蒸留器は紀元前3500年ごろのメソポタミア文明遺跡から出土しているが、なにを蒸留していたか定かでなく、花を原料に香料を精製したのではないかとされている。蒸留の技術は、船乗りにとって大事な問題である海水の淡水化や、鉄や水銀から金や銀をつくり出そうとした錬金術の研究にともなって発展した。

単式蒸留器のしくみ

今日につながる蒸留酒造りがはじまったのは、10世紀ごろのアラビアで『アランビック』という蒸留器が開発されてから。アランビックで蒸留した酒こそが、メジャーデビューした初の蒸留酒といえそうだけど、どこで、なにを原料に造られたかには2つの説があって、ひとつはアラビアでナツメヤシの実(デーツ)を原料に造った説。もうひとつは、イスラム文化の拡散にともなってアランビックが伝播したヨーロッパでブドウを原料に造ったという説だ。

どっちが真実か、同時進行したのかもしれないし、そんな犯人探しをしてもしょうがない。ただ世界初の蒸留酒の名前は「アラック」とされているので、アラアラつながりでアラビアかな? ともあれ、蒸留することで酒を保存できるようになったのは確か。それまでの醸造酒には糖質やタンパク質などが含まれていて、アルコール度数も低いため雑菌が繁殖しやすかった。しかし蒸留酒は有機成分を含まず、アルコール度数も高いので長期保存が可能。軍隊の遠征や長い航海にも持っていけて、これで人類は、いつでも酒が飲めるようになったわけだ。

<世界の主な蒸留酒>

世界の主な蒸留酒マップ

世界四大スピリッツといわれるのは、ジン、ウォトカ、ラム、テキーラだが、しかしこれはウイスキーやブランデーを別のカテゴリーとした場合のこと。製法から分類すれば、どちらも蒸留酒であり、日本の焼酎や泡盛も世界の蒸留酒のなかのひとつである。

 

■スコッチウイスキー

産地/イギリス 原料/大麦麦芽および穀物

大麦麦芽だけを原料に単式蒸留器で2回蒸留後、オーク樽で3年以上貯蔵されたのがシングルモルトウイスキー。その他の穀物を原料に連続式蒸留機で蒸留されたグレーンウイスキーを加えたのがブレンデッドウイスキー。ブレンド比率は秘密。

​詳しくは、コチラ

 

■アイリッシュウイスキー

産地/アイルランド島 原料/大麦・ライ麦・大麦麦芽など

地図には書き込めなかったが、グリーンのスコットランドの西のピンクの島がアイルランド。3回蒸留後、3年以上樽貯蔵する。

​詳しくは、コチラ

■ジン

発祥/オランダ・イギリス 原料/ライ麦・トウモロコシなど
杜松(ねず)の実を用いることが定義で、独特のシャープな香味が特徴。ほかに地域のボタニカルを加えてアレンジしてもよく、クラフトジンとして世界的に人気が急上昇。日本でも茶や果実、 香草などを加えたユニークな製品が販売されている。

詳しくは、コチラ

■ブランデー

産地/フランス 原料/ブドウ

白ワインを蒸留して樽貯蔵熟成。有名なコニャック、アルマニャックは産地特定の名称で、貯蔵期間などのルールはそれぞれ異なる。ブドウのほかリンゴやサクランボを原料にしたブランデーもある。

​詳しくは、コチラ

■ウォッカ

発祥/ロシア・ポーランド 原料/トウモロコシ・大麦・小麦などの穀類

連続式蒸留機を用いるため、蒸留後のアルコール度数は90%以上。かなりピュアなエタノールに近いが、さらに白樺炭で濾過されるのが特徴。無色透明・無味無臭なのでカクテルには最適。

詳しくは、コチラ

■アラック

産地/アラブからインドネシアまで広く 原料/ナツメヤシ・米・ココヤシ樹液など
蒸留酒の元祖とされ、イスラム圏のアラブ諸国から南アジアまで広い地域で造られるが、原料や製法は異なる。ヨーロッパのウゾやラクも、アラックをもとに生まれた。

​詳しくは、コチラ

■白酒(バイジュ)

産地/中国 原料/高梁(コウリャン)・トウモロコシ・小麦など

酒は液体で発酵させるのが普通だが、白酒は固体のまま地中に埋めて発酵させ、あとで水を加えて造られる。地域によって製法はさまざま、その香りによって数タイプに分けられる。

​詳しくは、コチラ

■焼酎・泡盛

産地/日本 原料/大麦・サツマイモ・米・そば・黒糖など

本格焼酎と泡盛は単式蒸留器で蒸留され、原料に由来する香味が特徴。麦焼酎、芋焼酎、米焼酎、黒糖焼酎などのほか樽貯蔵された製品もあり、個性豊か。甲類焼酎は穀類を原料に連続式蒸留機で蒸留され、ほぼ無臭で主にサワーなどのカクテルに用いられる。

​詳しくは、コチラ

■カナディアンウイスキー

産地/カナダ 原料/トウモロコシ・ライ麦

コーンウイスキーとライウイスキーをそれぞれ容量180リットル以下のオーク樽で3年以上熟成させたのちにブレンドして製品化する。

​詳しくは、コチラ

■アメリカンウイスキー

産地/アメリカ合衆国 原料/トウモロコシ・ライ麦
代表的なバーボンウイスキーはトウモロコシ51%以上79%以下。内側を焦がした新樽に2年以上貯蔵。おもにケンタッキー州やテネシー州で造られる。そのほかトウモロコシ80%以上のコーンウイスキーやライ麦51%以上のライウイスキーもある。

​詳しくは、コチラ

■ラム

産地/西インド諸島 原料/サトウキビ

製糖工程の副産物である廃糖蜜(モラセス)から造られる一般的なラムに対して、サトウキビの搾り汁から造られるアグリコールラムがある。連続式または単式蒸留後、ホワイトオーク樽に貯蔵。

​詳しくは、コチラ

■テキーラ

産地/メキシコ 原料/アガヴェ(竜舌蘭)

特定地域で栽培されたブルーアガヴェを51%以上使って造られる。100%使うとプレミアムテキーラと呼ばれる。無色透明のタイプから1年以上樽熟成させた製品まで。テキーラの名は原産地呼称。

詳しくは、コチラ

■カシャッサ

産地/ブラジル 原料/サトウキビ

サトウキビの搾り汁を発酵させ、連続式蒸留機または単式蒸留器で蒸留。無色透明タイプはカクテルに。アマゾン原生林の木を使った樽で貯蔵熟成されることもある。別名ピンガ。

詳しくは、コチラ

bottom of page