火入れと生酒

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日本酒には、ラベルに『生』の表示があるものがあります。しかも『生酒』『生貯蔵酒』『生詰』の3種類も。『生』のつく酒と、つかない酒は、なにが違うのか。『生』のつく酒3種は、どう違うのか。そのへんのところをスッキリさせようと思います。

 

日本酒は米を原料に、酵母という微生物の働きによってアルコール発酵して造られます。でもほどよく発酵したあとも酵母は生きていて、放っておくとさらに発酵が進み、飲みごろを過ぎてしまうのです。そこで、通常の製造工程では『火入れ』と呼ばれる加熱処理が行われます。熱を加えて酵母の活動をストップさせ、ちょうどいい発酵状態に保つわけです。

 

また火入れには殺菌の目的もあります。一般的な日本酒のアルコール度数は15度程度あり、そんな環境ではたいていの細菌は生きていられないのですが、『火落菌(ひおちきん)』と呼ばれる乳酸菌はアルコールに強い。酒のなかでどんどん増殖しちゃいます。

 

ホントに厄介なヤツで、コイツに汚染されると酒の温度が上昇して白濁し、酸っぱい異臭を放つようになって…、いわゆる腐造です。だから火入れによって火落菌を死滅させようというわけです。

 

『火入れ』という字面からは、相当な高温を想像してしまうかもしれませんが、火落菌は60℃程度の低温でやっつけられます。方法としては、熱湯を通した管や熱交換式のプレートヒーターに間接的に酒を触れさせたり、瓶に詰めてから湯煎殺菌されたり。あまり熱いとアルコールが飛んでしまうので、温度は60〜65℃。また高温のままでは日本酒の香りが損なわれるため、火入れ後は速やかに冷却しなければなりません。

 

通常、日本酒の製造工程では2回の火入れが行われます。1回目は、醪を搾ったあとタンクに貯蔵する前。2回目は、出荷にそなえてビンや容器に詰める前。そして、この2回の火入れをまったく行わず、生のままの状態で出荷される日本酒のことだけを『生酒』と呼びます。

火入れの有無や回数、タイミングによって名称の違いは次のようになります。

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<生酒>

まったく火入れを行っていない日本酒。加熱処理をせずそのままの状態で出荷されるため、フレッシュな若々しい味わいが楽しめるが、とてもデリケートな酒なので、製造にも輸送にも高度な品質管理が求められる。本生、生々と呼ばれることも。購入後は冷蔵庫保存し、開栓後はなる早で飲み切りたい。

 

<生貯蔵酒>

生のまま貯蔵し、出荷前に一度火入れを行った日本酒。生酒のようなフレッシュな味わいとまろやかな旨味が楽しる。生酒ほど徹底した品質管理は必要ないが、通常の日本酒と比べると味わいが変化しやすいので、購入後はできるだけ冷蔵庫で保管が好ましい。

 

<生詰酒>

貯蔵前に一度火入れを行い、出荷前には火入れを行っていない日本酒。生酒や生貯蔵酒に比べ酸味に落ち着きがあり、貯蔵熟成による熟れた果実のような甘い香りとジューシーな旨味がそのまま詰まっている。

 

秋に店頭に並ぶ「ひやおろし」は、冬から春に造った酒に一度火入れし、夏の間熟成させ、火入れを行わずに出荷されるもので、生詰酒の一種。冷や(生)のまま、卸す(出荷する)という意味で「ひやおろし」と呼ばれる。

『生酒』『生貯蔵酒』『生詰酒』の違い、いかがでしたか?