麦焼酎

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スッキリ系から どっしり系まで、
「麦焼酎」は味わいが多彩だ

本格焼酎は、長い間、クセが強くて、地元の人だけが好んで飲むお酒だと思われてきた。鹿児島に住む年配の方に聞くと、昔の焼酎はもっとクセがあったというから、かつては本当にそうだったのかもしれない。でも、そんなイメージを一新させたのが麦焼酎だった。

 

本格焼酎の蒸留は、それまで大気圧のもと『常圧』で行われていたのだが、1970年代に『減圧蒸留』という製法が開発されたことで、味わいが変わった。蒸留釜の圧力を下げて蒸留することで、クセのない、スッキリと飲みやすい焼酎が造れるようになったのだ。

この減圧蒸留法を発明したのは、福岡の日本酒蔵とされているが、積極的に製品に取り入れたのは大分の焼酎蔵だった。1973年に麦焼酎『二階堂』、1979年に同じく麦焼酎『いいちこ』が発売され、1980年代にはこれらスッキリ系の麦焼酎が全国区になっていって、第二次焼酎ブームの火付け役に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はじめて『いいちこ』を飲んだのは、東京・江戸川橋駅近くの居酒屋だった。有楽町や新橋のオヤジっぽさはなくて、でも別にダイニングなんとかみたいにシャレてるわけでもなかったけれど、おっ!と思ったのは、店内に流れているBGMが洋楽だったってことだ。
 

はじめての『いいちこ』のロックが運ばれてきたとき、

♫ I see trees the green red roses,too〜とはじまって…
いい歌だなあ…と飲んで、
♫ What a wonderful world. と締めくくった。

これが僕の『いいちこ』初体験。
『いいちこ』飲むときは、

ついルイ・アームストロングの『What a wonderful world』をかけてしまう。

人気は今も続き「いいちこ」は麦焼酎のなかでダントツ人気。置いてないコンビニはないだろうと思われるが、逆にヘンなこだわりのある居酒屋は、わざと外してる感じ。笑

さて、麦焼酎の主原料は、二条大麦という種類だ。麦にはほかにパンや麺になる小麦、麦茶や食用に使われる六条大麦、裸麦などがあるが、二条大麦が最も種子の粒が大きい。二条大麦の名前は穂の形態(条性)によるもので、麦穂を上から見たときに6方向に粒が広がっているのが六条大麦、2方向の粒だけが大きく成長するのが二条大麦だ。

2020年に発表された国税庁の調査データで、九州各県の本格焼酎の出荷量を主原料別でみると、芋焼酎が53.7%、麦焼酎が38.2%。両方で9割を占めている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これを県別の構成にした場合、鹿児島や宮崎では芋焼酎が最も多いのに対し、大分・長崎・福岡・佐賀では麦焼酎が最多。大分で造られる本格焼酎のじつに99.6%が麦焼酎というから、現在の麦焼酎の本場は大分といえる。しかも大分の場合、このうち89.6%が九州外へ移出されているところから、大手メーカーによる大規模な生産が多いのだろうと思われる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に麦焼酎の比率が高い長崎には、離島「壱岐」があり、ここは麦焼酎の発祥の地とされている。九州と対馬の間、玄界灘に浮かび、縄文時代から人が住んでいたそうだ南北17km・東西14kmとさほど大きくはないが、古代より朝鮮半島と九州を結ぶ海上交通の中継地として重要な役目を担っていた。蒸留技術が日本へ伝播したルートとして、琉球から薩摩ではなく、朝鮮半島から壱岐へ渡ったという説もあるほどだ。

壱岐の麦焼酎は、16世紀からの長い歴史のなかで独自の製法へ高められ、米麹1/3と大麦2/3で造られるのが特徴。1995年には地理的表示の産地指定を受け「壱岐焼酎」と表記されるようになった。麦の香りに米麹による天然の甘みが加わり、麦麹を使った麦焼酎に比べ味わいに厚みがある。

麦焼酎の製法は、地域によってある程度の傾向はあるものの、製法の選択肢が広いので、さまざまな組み合わせが可能だ。

1)麹原料は、米または麦。どちらを選ぶかで味わいは異なるし、両方をブレンドすることもできる。

2)麹菌は、白麹または黒麹。どちらを選ぶかで味わいは異なる。

3)主原料は大麦だが、全量を麦麹にして仕込むこともできる。

4)蒸留方法は、しっかりした味わいの常圧蒸留またはスッキリの減圧蒸留。それらのブレンドも。

5)さらに貯蔵方法は、大量生産向けのタンク貯蔵から昔ながらの甕貯蔵やウイスキーのように樽貯蔵した製品もある。貯蔵年数によっても味わいに変化が生まれるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

​さて、なに飲みますか?

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【おすすめ麦焼酎】

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天の川(壱岐)
天の川酒造

故・開高健氏が絶賛した壱岐焼酎。米麹・大麦・地下水で仕込み常圧で蒸留。麦の風味と米の甘みに加え、コクと旨みがある。2年貯蔵。

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ちんぐ(壱岐)
重家酒造

ちんぐとは壱岐の方言で大親友の意。常圧蒸留と減圧蒸留を”フレンド”することで、スッキリとしたなかにも麦の香ばしさと米麹の甘さがある。

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いいちこ日田全麹(大分)
三和酒類販売

麦麹+大麦で造られるレギュラー品に対して、こちらは麹のみを原料とする全量大麦麹仕込み。かぐわしい香りと深くやさしい旨みが特長。

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つくし 白(福岡)
西吉田酒造

減圧蒸留による爽やかな香りとスッキリした味わい。でも飲みごたえがあるのは黒麹菌を使っているから。5年以上熟成させた原酒もブレンド。

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兼八(大分)
四ツ谷酒造

大麦の一種である裸麦を原料に100%使用。スッキリタイプの麦焼酎が多いなかで、真逆の風味豊かで、こってりとした味わい。お湯割りが最高!

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桜GOLD(鹿児島)
田苑酒造

樽貯蔵麦焼酎のパイオニアによる新製品。人気の田苑ゴールドの原酒を、桜材を使った樽で長期熟成。口中に広がる濃厚な甘みは桜樽ならでは。

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中々(宮崎)

​黒木本店

原料を自家農場で有機栽培する黒木本店。麦麹仕込み、減圧蒸留仕上げ。しっかりとしたコクと軽快な飲み口が特長。百年の孤独の原酒でもある。

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田苑 黒麦(鹿児島)

​田苑酒造

国産大麦を黒麹で仕込んで常圧蒸留。全量を甕貯蔵して熟成させた鹿児島らしい麦焼酎。ガツンと濃厚なのにまろやかで、芋焼酎派にもおすすめ。