トンソクとお湯割り
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「トンソクでも食いに行くか!」

シャッターを下ろしながら、店長が言った。

 

トンソクを食べたことがないうえに、それが豚足だということも知らなかった僕は、連れて行かれた炉端居酒屋で眼の前に現れたモノを見て、本当にびっくりした。

 

ここ宮崎は、生まれ育った関西とはいろいろ文化が異なるなあと思いはじめていたのだが、まさか豚のつま先を食べるとは。

 

もちろん今は豚足を見ても驚かないし、沖縄の牧志市場では豚の顔の皮が原型のまま売られているのを見た。豚の顔や耳を細かく刻んだ和えものはむしろ好物だ。しかしはじめて見たときの衝撃は忘れない。そして、そのうまかったことも。

 

豚足は九州や沖縄では日常的に食べられている。煮物にされることが多いようだが、はじめて食べたのは塩焼きだった。皮がパリッと焦げていて香ばしく、かぶりつくと中から肉汁がジュワジュワー。口のまわりをベタベタにしながら、そこへビールをグビグビと流し込んだ。

 

ジョッキが空になり、おかわりしようかなと思ったとき、店長が、

「お湯割りにしようよ」

と言った。

 

また知らない世界だった。焼酎をお湯で割るのだという。それまでに焼酎を飲んだことがなかったわけではないけれど、お湯割りなんて聞いたことない。

900mlのボトル、目盛りの入ったガラスのコップ、そしてポットがカウンターに並ぶ。

店長が、

「お湯割りを作るときは、お湯が先なんだ」

と言いながら、3本入った目盛りの下のラインまでポットからお湯を注ぎ、それから焼酎をなみなみに注ぎ足した。

 

はじめての芋焼酎のお湯割りは、あったかくて、すこし臭いような、でもいい香りでもあるような、それでいて甘い味で、日本酒の熱燗や飲んだことのある焼酎とはぜんぜん違った。20歳の冬。忘れられない、本格焼酎との出会いだった。

 

本格焼酎のブームは、1980年代の麦焼酎があって、芋焼酎が全国的に注目されだしたのは2000年代だ。だから、それまで、九州以外で芋焼酎をお湯割りで飲む人なんて、そんなにいなかったように思う。トンソクもお湯割りも地域に根ざした立派な文化だ。

お酒と文化

【宮崎のオススメ芋焼酎】

はじめて飲んだお湯割り芋焼酎の銘柄を覚えていない。宮崎の人は鹿児島産ではなく地元の焼酎を好むので、おそらく『霧島』だったのだろうと思うが。

現在、宮崎で焼酎を造っている蔵元は34蔵を数える。最大手の霧島酒造を筆頭に、スーパーの店頭でも見られる『木挽』の雲海酒造、高千穂酒造、麦焼酎でも人気の黒木本店や神楽酒造あたりがよく知られているだろう。

でも、まだまだあるんですよ!おいしい芋焼酎が。

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かんろ
京屋酒造(宮崎)

昔ながらの甕仕込みにこだわる小さな蔵元。白麹のやわらかな味わいで、じわっと心にしみてくる文句なしのうまさ。キャッチコピーは壺中貯春。

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尾鈴山 山ねこ
尾鈴山醸造所(宮崎)

水の湧く山の奥深くで、手作業を大事にしている蔵。原料芋にジョイホワイト、麹米にヒノヒカリを使い、白麹のスッキリした味。ラベルもいい。

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川越
川越酒造場(宮崎)

江戸末期創業、現在19代目の蔵の代表銘柄。黄金千貫を白麹と宮崎酵母で仕込んで常圧蒸留。蔵に空調はなく、昔ながらに職人の五感で旨さを造る

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月の中
岩倉酒造場(宮崎)

かつては夫婦二人だけで造っていたという蔵。すべての工程が手作業で、芋の甘〜い香りとふくよかな旨さがジワ〜。限定販売店へ直接卸の希少酒

個人的には芋焼酎ベスト10の1本。機械濾過は本来の旨味も取り去ってしまうという理由から、油分などを手ですくっただけ。これが本当の旨さ!

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無濾過 御幣
姫泉酒造(宮崎)

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山猪
すき酒造(宮崎)

南九州産の紫芋を黒麹と宮崎酵母を使って和甕でで仕込んだ。地下120mから汲み上げた天然水を使う。華やかな香り、まろやかで濃厚な味わい。

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ひむか寿 赤芋仕込み
寿海酒造(宮崎)

食用としても人気が高い地元産の赤芋「宮崎紅」が主原料。芋本来の甘みが強く、芳醇な香りやトロ〜リとしたまろやかな旨味を造り出している。

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赤魔王
櫻の郷酒造(宮崎)

芋焼酎ベスト3に入る1本。大手の蔵なので量産品もあるが、この味わいは素晴らしい。紅芋の甘さ、まろやかさ、甕貯蔵による深い味わい。完璧