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山ホトトギス 初鰹
新緑

桜が散ったと思ったら、いきなり新緑の季節である。

『目には青葉 山杜鵑 初鰹』

 

言わずと知れた江戸時代の俳人「山口素堂」の俳句です。

 

初夏の風情はわからんでもないが、もう少し去りゆく春をなごみながら飲んでいたいなあと僕は思うのだ。『晩春』を愛しく思う言葉は、あまりない。「夏が来る」前に、散りゆく花びらを前に「春が去っていく」状況を表現できないだろうか。

お酒と文化
桜散る

桜は、花が散ると同時に青葉が出てくる。すごいスイッチングだ! ホトトギスは全長約28cmのカッコウに似た鳥で5月ごろ渡来して、ウグイスの巣に卵を生んで育ててもらうという。ウグイスにとって、どんなメリットがあるのかわからないが、まあウグイスの季節とホトトギスの季節、これが4月から5月への移り変わりなのだろう。

 

さすが縦長の日本列島、僕は5月に北海道の牧場でアルバイトをしていたことがあるが、夜にはストーブをつけていた。沖縄では梅雨前の一番いい時期で、真夏の灼熱ではないお天道様が気持ちいい。

 

この話は書き出したはいいものの、北と南じゃぜんぜん違うじゃないか!というわけで、日本のやや真ん中あたりの季節感で書いていこうと思う。

初ガツオ 初鰹

さて、江戸時代、「かつお」は「勝魚」ということで縁起のよい食べ物ものとされていました。中でも初夏に獲れる「初鰹」は大変高価なもので、江戸っ子にとっては「女房を質(しち)に入れてでも食べたい」と言われるほど人気だったそう。

 

「かつお」は温暖な海域を望むので、黒潮の流れる太平洋が生息地です。南方の海で卵から孵化した幼魚はエサを求めて北上しながら成長していきます。この時に水揚げされるのが「初鰹」。春(3月)から~初夏(5月)旬となります。

「初鰹」の特徴は、「かつお」特有の匂いが強くなく、身がしまっていて、弾力が強く、歯応えもあります。皮も一緒に食べられるので、タタキにして、ネギやミョウガ、ニンニクなどの薬味を乗せて食べるのがいいですね。

カツオのたたき

「かつお」特有の匂いが強くないとはいっても、ないわけではありません。だから、合わない酒も結構あります。日本酒に含まれる有機酸は、魚介の生臭みの原因物質である「トリメチルアミン」を中和する作用があるのですが、華やかでフルーティな香りを持つ大吟醸酒なんかは逆に臭みを助長してしまうのです。

 

かつおの身の力強い味わいのため、酒もそれに合わせてパンチのあるタイプがよくて、さらに日本酒特有の甘味も、ここではちょっと控えたい。となると、合わせて飲みたいのは、やはり土佐の酒ではないでしょうか

 

脂の乗った秋の「戻り鰹」なら、だんぜん本醸造の超辛口酒ですが、「初鰹」には辛口の純米酒、本醸造酒、ワインならシャルドネやソービニヨンブランなど辛口の白ワイン、スッキリ系の麦焼酎もイケルんじゃないでしょうか。

『花は散り 夏遠からじ 初鰹』

【初鰹におすすめ】

土佐鶴 純米酒

​土佐鶴酒造(高知)

純米ならではのしっかりしたコク。爽やかな酸味が生むキリッとした味わい。日本酒度は+4程度なのに、さすが土佐鶴。旨い辛口の純米酒です。

司牡丹 船中八策

​司牡丹酒造(高知)

日本酒度+8の超辛口の純米酒。後口は潔いほどキレがあり、地元高知でも「最も土佐らしい、カツオにはこの酒が最高」と熱っぽく語られている

美丈夫特別純米

美丈夫 特別純米

濱川商店(高知)

ふっくらとした米の旨みを持ちながらも、程よい酸味とキレの良さできれいな余韻が楽しめる。合わせる料理の幅も広く、食事の際に頼りになる。

桂月超辛口

桂月 特別純米酒

​土佐酒造(高知)

土佐嶺北地方の棚田で栽培された酒米を100%使用。すっきり辛口(日本酒度+11)に仕上げた特別純米酒。鰹たたき、刺身など魚料理との相性◎

酔鯨特別純米酒

酔鯨 特別純米酒

​酔鯨酒造(高知)

まず名前が好き。旨みとキレのいい後味が料理に合う。55%まで磨いた特別純米、日本酒度+7の辛口酒。10℃ぐらいに冷やしていただくとgood。

亀泉 特別純米

​亀泉酒造(高知)

高知県産酒造好適米の土佐錦を60%まで精米し、仁淀ブルーで有名な仁淀川水系の湧水仕込み。バランスに優れ、いくらでも飲み進められる味わい

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